手ぬぐいの端はなぜ縫われていないの!?手ぬぐいが切りっぱなしになっている理由をご紹介
手ぬぐいを実際に手に取ってみると気が付くと思いますが、タオルやハンカチとは違い、左右の二辺が切りっぱなしになっています。
これは製造ミスでもなんでもありません。端の部分が切りっぱなしになっているものが古くから受け継がれてきた伝統的な手ぬぐいなのです。
では一体なぜ、手ぬぐいの端を切りっぱなしにすることが伝統として現在まで引き継がれているのか。その理由や手ぬぐいの特徴について迫りたいと思います。
手ぬぐいの端はなぜ切りっぱなしなのか!?
手ぬぐいの歴史については諸説ありますが、古くは奈良時代頃から清掃用の道具として使われていたということです。
その後、江戸時代になると、日本でも綿花の栽培が盛んになり、着物が大量に生産されるようになります。それらの着物を作る際に余った布切れを利用して作られたものを、「手ぬぐい」と呼ぶようになり、人々の間で広く使用されるようになったといわれています。
このように、本来は処分するはずの余った布切れである手ぬぐいは、使い捨てすることを前提に使われていたので、わざわざ時間やコストをかけて、端を縫製するようなことはしませんでした。
ただ、現代であればミシンなどを使い、手間も時間もかけずに縫製することは容易いはずです。それにもかかわらず敢えて手ぬぐいを縫製しないのには理由があるのです。
乾きやすくて衛生的
手ぬぐいは端の部分が切りっぱなしになっているので通気性が良く、水分を吸収しても直ぐに乾きます。
通気性が良くて直ぐに乾く手ぬぐいは、例え汚れたとしても、水洗いして繰り返し何度も使用できます。
仮に端の部分を縫製してしまうと、折り込んで縫った部分に水分がたまり、乾きにくくなってしまいます。しかも、その水分を放置しておくと、カビなどの雑菌が繁殖しやすい状態になり、とても不衛生です。
端の部分が切りっぱなしになっていることで、手ぬぐいは乾きが早く繰り返し何度も使えるうえに、衛生的な状態も保つことができるのです。
手で簡単に裂けるので、応急処置に使える
手ぬぐいが切りっぱなしになっていることで、手で簡単に裂くことができるという点も大きなメリットのひとつです。事故や災害時に以下のような方法で応急処置に使えます。
手ぬぐいを使った応急処置の方法
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- 絆創膏やガーゼの代用(止血)
- 絆創膏やガーゼの代用として、清潔な手ぬぐいで出血部位を抑えて止血することができます。
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- 包帯代用
- 傷口の大きさに合わせて清潔な手ぬぐいを切り裂けば包帯の代用として使えます。
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- 三角巾代用
- 腕を骨折した際など、腕を吊って安定させるための三角巾の代用として使えます。
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- マスク代用
- 手持ちのマスクがない場合、手ぬぐいはマスクの代用としても使用できます。
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- 靴下・スリッパ代用
- 手ぬぐいは吸湿性にも優れているので、避難所などで足元の冷え対策に靴下やスリッパの代用として使用できます。
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- ハンマー代用
- 石などのオモリを手ぬぐいに包んで結び、遠心力を使って振れば、ハンマーの代用として窓ガラスなどを割ることができます。
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- 防寒/暑さ対策
- 首巻きにしたり、肌着の中に入れて温度調整に活用できます。
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- SOSサイン
- 助けを求める際のSOSサインとしても使用できます。目立つ色や柄の手ぬぐいであればより効果的です。
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- 体を拭く
- 入浴ができないときは、水で濡らして絞った手ぬぐいで体を拭くとさっぱりします。
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- すべり止め
- 手ぬぐいはすべり止めとして使用できます。食器棚の棚板に敷くと、器などのモノが滑るのを防ぐことができます。
尚、下駄・草履・雪駄などを履くことが一般的だった江戸時代には、鼻緒が切れた場合の応急処置として手ぬぐいはとても重宝されていたといわれています。
切りっぱなしの手ぬぐいをそのままお洗濯しても大丈夫!?
手ぬぐいは切りっぱなしでも気にせずに、沢山使ってどんどんお洗濯して大丈夫です。
はじめの数回はお洗濯後に糸がほつれてしまいますが、ほつれた糸と全体を整えながらカットして、何度かお洗濯を繰り返すことで糸同士が馴染んでフリンジ状になり、生地端から1cm程度でほつれが止まります。
ちなみに、ほつれた糸を無理に引っ張ると生地にシワが寄る原因になり、手ぬぐい本来の魅力が失われてしまうのでNGです。
新品の手ぬぐい
新品の手ぬぐいは断面がまっすぐでキレイです。
複数回お洗濯した手ぬぐい
お洗濯を繰り返すうちに、糸同士が自然に馴染んで端が味のあるフリンジ状になります。
まとめ
手ぬぐいは使いこむほどに、ほつれが出なくなるだけではなく、柔らかくなり肌に馴染んできます。
「手ぬぐいは育てるもの」といわれるだけあって、革やデニムと同様に正しくお手入れをして経年を楽しみながら大事に使っていけば、使用者ならではの味があるオリジナルな手ぬぐいへと育っていくはずです。
先人たちから引き継いだ、日本の文化・歴史の中で愛され使い続けられてきた手ぬぐいならではの魅力や特性を、次の世代にもしっかり継承されていくことを切に願います。